60 井上荒野 文芸春秋
昭和の歌謡曲を題材に書かれた短編小説集。人間はめんどくさい、恋愛はどろどろ、ねっとりしている。こうだよなあ、昭和歌謡。
いろんな衣装の女性たちが丸くなって実は結構楽しそうに、でもあんまり上手でもなく踊っている表紙絵があまりにもぴったりしすぎていて、笑える。
人の気持ちなんて計り知れない。愛したあの人でも本当のことを言っているかどうかなんてわからない。自分の気持ちすら、予測不可能。だから切なく歌うしかないのね。
もう、こういう世界は読むだけで十分だなあ。とつくづく思うよ。本当のことだけを言って生きていく楽さを知ってしまったら、元には戻れないね。
と、おばちゃんはつぶやくのであった。