オランダ館の娘

オランダ館の娘

2025年10月26日

145 葉室麟 ハヤカワミステリ文庫

葉室麟は以前に読んだことがあるはずなのだが、記録が見つからない。日記をつけ始める前に読んだのかもしれない。

江戸時代、長崎のオランダ商館長が江戸参府する際の宿としていた「長崎屋」の娘、るんと美鶴の物語。間宮林蔵、高野長英、シーボルトなど歴史上の人物が登場する。

日蘭混血の丈吉という青い目の青年は、かつて長崎屋の危機を救った恩人の息子である。彼と美鶴は心を通い合わせるが、回船問屋で殺しの現場に居合わせたところから問題が起き、捕まってしまう。るんの結婚相手の駒次郎もシーボルト事件に巻き込まれ、囚われの身となる。二人の美しい姉妹が、歴史に翻弄されながら思いを貫く物語…なのだが。

丈吉はオランダ商館長が遊女に産ませた子である。また、物語にはシーボルトの子を産んだオタクサと呼ばれた遊女とその娘イネも登場する。丈吉はオランダ商館で住職につく前途有望な若者であるし、オタクサやイネをシーボルトは大事な家族と思っていたとも描かれている。だが。なんだかなあと思ってしまう。その時代の混血児がどのような扱いを受けたか、その時代の外国人専門の遊女が遊郭で後にどのように扱われたか。それは決してて生易しいものではなかったはずだ。だが、そのようなことはない一つ描かれていない。シーボルトは最後に別れを告げる間もなく日本を去ることになる。(歴史上、彼は日本を再訪することもまた確かなのだが)

オランダ商館の娘たちがいずれも美しく心清らかのな姉妹であったことも、オランダ人の相手をした遊女たちが美しく優しかったことも、そしてそれが良き思い出として彼らの胸に残ったことも、なんだか素直に受け取ることのできない自分に気づく。それって、すごく都合のいい話だなーと思ってしまったのだ。まあ、物語なんだからそうなんだろうけれど。

高野長英や間宮林蔵は、結構嫌な奴らだった。だからこそ、彼らの姿には不思議なリアリティがあった。そういうものじゃないか、人間って。なんて思ってしまった私である。