スイーツレシピで謎解きを~推理が言えない少女と保健室の眠り姫

スイーツレシピで謎解きを~推理が言えない少女と保健室の眠り姫

65 友井羊 集英社文庫

ハードな読書が続いたのでちょっとは能天気な本が読みたい、と思っていたら夫が渡してくれた本。これは和みました、よかった。

吃音のせいで人とうまく関われない主人公の女子高校生と、イケメンで誠実で清潔感ある、お菓子つくりが得意な男子高校生、それにその彼と特別な関係性にある保健室登校のお姫様のような女子高校生。いわゆる日常の謎のミステリである。チョコレート、カトルカール、シュークリーム、フルーツゼリー、バースデイケーキ、クッキー、コンヴェルサシオン、マカロン。おいしそうなお菓子のレシピとともにちょっとした出来事に潜む謎が解き明かされていく。それとともに、登場人物は少しずつ変化し、成長し、分かり合っていく。

いいわあ。じっとしていてもミサイルも飛んでこなければ狙撃もされない日常って。と、ここしばらくの読書に毒されて思う私。

吃音の問題は難しい。「きよしこ」によれば、吃音教室はあんまり役に立たないそうだ。どもらないようにしようとするよりは、ちゃんと話せない自分そのまんま受け入れて、その中で生きていく決意をするほうが役に立つという。この本はどう扱っているのか、は読んでみてほしいのだけれど。

私たちは誰もが何らかの欠陥を抱えているし、うまくできないことや失敗すること、間違えることがたくさんある中で、そんな自分で生きていくしかないのだ。私も、とんでもない間違いや失敗をやらかしては周囲に迷惑をかけ、自分を情けなく思い、がっかりし続けてもいる。だとしても、そんな自分で生きていくほかはないのだよね。

わかってくれる友達や家族がいて、日々を静かに平穏に暮らせるのなら、それをうれしく感謝して生きていけばいい、と思うのだよね。そう思いたい、私は。ああ、これも、ここ数日のハードな読書のせいで思っているだけなのかしら。