プロジェクト・ヘイル・メアリー

プロジェクト・ヘイル・メアリー

2025年10月18日

140 アンディ・ウィアー 早川書房

SFは結構ハードルが高い。私がそもそも科学的人間ではないうえに、訳の分からないことに対する恐怖心が強い質だからかもしれない。だが、時としてSFがとても美しく、面白く、興味深いことも私は知っている。

この本は、以前、夫がその面白さに狂喜乱舞して読み切り、大いに勧めてくれた。だが、そのとき私には、あいにく他に読むべき本がたくさんあったのだと思う。そして、図書館では次に読みたい予約者がひしめいていた。だから、私が読むことなく本は返却され、次の人に手渡された。私はチャンスを逸していた。

先日、学生時代の友人が我が家を訪れ、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」がいかに面白いかで夫と盛り上がった。映画化もされるそうで、映画好きの彼女の娘も心待ちにしているとまでいう。取り残された私。というわけで、大慌てで借りてきた。そして、読んだ。ねえ、みんな。これはもう、ものすごく面白いよ!

宇宙船の中で目を覚ました主人公、グレース。自分が誰なのか、なぜこんな場所にいるのかも覚えていない。他にクルーは二人。でも、二人とも、もう死んでいる。たった一人で地球から遠く離れて、彼は徐々に自分が何をすべきだったのかを思い出していく。地球は危機に瀕していて、その危機を救うために遠い宇宙のかなたに片道だけの燃料をもって彼らは送りだされたのだ。どうしたら地球が救えるかがわかったら、そのデータだけを地球に送り返すロケットを携えて。彼は、宇宙の果てで、同じように母星の危機に瀕していた異星人と遭遇する。そして、彼とともに問題解決に立ち向かう。

片道分の燃料だけしか持たないなんて、まるで神風特攻隊ではないか。仲間を救うために飛んでいくなんて、まるで宮沢賢治のグスコーブドリではないか。怖いじゃないか。が、この物語は、怖くはない。いや、危機に瀕することはたびたびあるし、その度に心は消耗もするのだが、それと同時に、明るく、温かいものが溢れている。異星人との美しい友情が育まれていくのだ。

エイリアンは、地球人のお腹に卵を産み付けたり、攻撃して来たり、怖くて害悪をもたらすものだと思っていた。が、この物語はそうではない。彼は知性にあふれ、ユーモアも思いやりもある。ただ外見も生命維持方法も文化も知覚も何もかも地球人とは違っている。すべてが違っている相手と、どのように分かり合い、通じ合い、心を通わせていくか。それが丁寧に描かれている。言葉や文化風習の違う外国人排斥を声高に叫ぶみなさんは、この本をまず読んだらどうかな。異文化をもつ者同士が支え合い、助け合い、分かり合うことの大切な意味を、この物語は教えてくれる。

それにしても、これをどうやって映画にするのだろう。この物語の美しさをどう映像化できるのかな。心配半分、楽しみ半分である。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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