マッドのイカれた青春

マッドのイカれた青春

175 実石沙枝子 祥伝社

これも初めましての作者。どこで見つけたのかなあ。びっくりするくらい引き込まれた。気持ちの良い小説だった。

リカちゃん人形みたいに美しい顔で完璧なプロポーションを持った、イギリス人と日本人のハーフ填島朱里ダイアナ。彼女は自分をマッドと呼ばせる。成績は抜群にいいけれどブスで太り気味の馬淵李子とマッドが高校入学の日に出会う。李子は中学時代に散々いじめられていたので、変人キャラを前面に出して孤独だけを友に、いじめられない三年間を目指そうとしていた。が、誰からもすぐに注目され憧れられてしまうマッドにぴったりとくっつかれ、常に行動を共にするようになる。マッドはマッドで、美しすぎるが故の苦労があったのだ。

高校時代、私も、同じサークルに属する絶世の美少女がいた。本当にかわいかった。一緒に歩くと、彼女を見て振り返る人が何人もいた。何人もの男子に告白されていたし、駅のホームで知らないよその男子学生に言い寄られているのを見たこともある。彼女はだけど、結構、大変そうだった。どうしても妬みの対象になって、陰口をたたかれることが多かったし、クラスでは無視をされたり、モノがなくなることすらあった。「街で見かけたきれいなあの子」みたいな特集で雑誌に載って、高速の厳しい学校だったので職員室に呼び出されて叱責されたりもしていた。「変な知らない人に付け回されるので一緒に帰ってくれない?」と頼まれたこともある。私と一緒なら安全なのかよ、と思いもしたが、一緒に帰った。きれいなのも大変なんだろうな、と思った。おかげさまでそういう苦労を私は知らない(笑)。ちなみに彼女はのちにモデルになった。

と、そういうことだ。マッドもその美しさゆえにいらぬ苦労を重ね、そしてそれは周囲に理解されない。仲良くなろうとしてくる人は、彼女の「がわ」を見ているだけで、彼女が本当はどんな人間なのか、全然わかろうともしない。ねたむ人も、彼女の内面には興味がない。それがわかったのは、聡明な李子と、小学校時代からの彼女の隣人、佐々木忍だけだった。

お金持ちの男性がきれいな女性に囲まれながらもなかなか結婚できないのは「こいつが好きなのは、俺自身か、それとも俺の金か」がわからないからだという。美しい女性もそれと似たようなものだ。本当の自分を知り、それを好きになってくれる人がむしろいなくなってしまう不幸。それって嘘っぽい話にも思えるが、この物語には実にリアリティがあった。マッドも李子も忍も、それぞれに良いキャラクターであり、愛せる人たちであった。何が幸せで、なにが不幸かなんて簡単には決められない。だけど、人は与えられたものを受け入れて、それを抱きしめて精いっぱい生きていくしかないのだ。

まだ非常に若い作家である。これからが本当に楽しみだ。よい物語を読めてよかった。

さて、これにて今年の読書は終了かも。今年は175冊でした。(上下巻とかまとめてカウントしてるので多少の誤差はあるけどさ。)昨年は色々大変だったので151冊だったから、少しは読書がはかどった一年だったということなのかな。では、皆様、よいお年を。