174 古賀及子 ポプラ社
この作者も初めましてだ。このところ新しい出会いが多い(笑)。これは、エッセイというのかな。ありがちな「好きな食べ物は何ですか」に真正面から4カ月も向き合った本である。
小学生の質問に二大ありがちな「好きな色は何ですか」「好きな食べ物は何ですか」。それでその人の何がわかるのか、とも思うが、子どもにとっては、それって結構、重要な他者理解の一歩なのかもしれない。この作者は好きな食べ物をあれこれ考えて、それが持つ意味合い、味わい、思い出、見た目、などなど様々に考察する。いくつもの候補が出現し、これか!と思っては躊躇い、これぞ!と思っては、また悩む。
ひとことで好きと言っても種類が、ある。
憧れる、尊敬する、共感する、興奮する。安心する、好きな気持ちにはさまざまにポジティブな感情が同居する。対象によって心の動きはずいぶん違う。
憧れるのは寿司で、尊敬するのはおはぎで、共感するのはオムライスで、興奮するのは安いドーナツで、安心するのは肉まんだ。エビチリに守られて、寿司に納得して、チーズケーキにときめいて、こんぶ飴に笑って、アボカドに可能性を感じ続ける。好きな食べ物たちは、それぞれ別の感情を連れてくる。それで私はずっと、くるくる翻弄させられるのだ。(「好きな食べ物がみつからない」より引用)
さて、この中から「好きな食べ物」は決められるのか。と思っていたら、思わぬ伏兵が‥‥と物語は進行する(笑)。
私の好きな食べ物は茄子だ。家族全員、知っている。茄子料理の時は黙っていても少し多めによそってくれたり、外食で茄子が入っていると黙ってそっと皿に取り分けてくれるくらい、私の茄子好きは知られている。霊魂は、お盆にキュウリの馬でやってきて茄子の牛で帰るそうだが、私は来るときも茄子だろうとみんな言っている。そうに違いない。だけど、考えてみたら私も、憧れるのはチーズリゾットで、尊敬するのは生春巻きで、共感するのは担々麺で、興奮するのはエビの足の部分の天ぷらかもしれない。安心するのは湯豆腐で、納豆に守られて、カレーに納得して、イチジクにときめいて、味噌煮込みうどんに笑って、ピザに可能性を感じ続けるかもしれない。読んでいて、私もどんどん翻弄されてしまった。
解説が上白石萌音なのに、ちょっと驚いた。ちゃんとした文章で感心した。
