逃亡者は北へ向かう

逃亡者は北へ向かう

171 柚月裕子 新潮社

直木賞候補作、夫のおすすめ。この作者は「教誨」以来である。あれも重く切なかったが、これもさらに苦しく切ない。東日本大震災前後の話であるだけに、あの時見た様々な光景がよみがえってしまう。みんな、苦しくつらかった。それに加えてさらに苦しい物語である。

どんな風に育てられたのか、どんな風に愛されたのか。そんなテーマがこの作者の物語の背景にはいつもあるように思う。誰かに心から大事だと思われていたら、それを信じられたら、人は生きる力を持てる。それは本当のことだ。どんなに辛くても、なにがあっても生き抜こうとする力は、大事な人がいたこと、いること、互いに大事だと思い合えたことが与えてくれる。

どんなときにも子どもは希望の光だ。自分が子どもだった時には全然気が付かなかったけれど、子どもが生きている、笑っている、それだけでどれだけ人を幸せにするか。そんなことを改めて思う。読み始めたら一気の作品であった。