必死のパッチ

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2021年7月24日

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「必死のパッチ」 桂雀々 幻冬舎

桂雀々という落語家さんを私はあまり知らない。本の裏表紙の写真を見て、「あ、あの人か」と思った程度だ。ちゃんと落語を聞いたことは全然ない。

この人、とんでもない子ども時代を送っている。「麒麟」の田村に匹敵する。おとんの借金がひどくて、小6の時に、まずおかんが出ていった。借金取りが毎晩取り立てに来ても、おとんは博打を止めなかった。

中1の時、おとんは、これで一発当てようと、水道水でピラニアを飼ったが、数日で死んだ。おとんは逆上し、雀々は、夜中に包丁を突きつけられた。心中しようというのだ。雀々は必死にそれを阻止し、そして、おとんは出ていった・・・。

その後、おとんは、ごくたまに数千円をおきに来るだけ。桂雀々は、近所の人に助けられ、民生委員に教えられて活保護を受けながら、中学卒業までを一人で生きるのだ。

誰かに笑って欲しい一心で、素人お笑い番組に出ては笑いをとっていた彼が、ある日、ラジオの落語を聞く。そして、それを書き留めて、再現して、教室で笑いを取る。

桂枝雀の弟子になった彼を、タクシー運転手になったおとんが見かけたことがあるという。あと一台違ったら、おとんのタクシーに乗ったのに、すれ違ってしまったそうだ。その後、おとんはひっそりと死んだという。

出奔したおかんのほうは、後で彼の楽屋を訪ねてくる。これが、想像を絶したおばはんであった。

なんともすごい人生だなあ、としみじみ嘆息する。
それにしても、落語家さんや芸人さんは、そんなふうに凄まじい歴史を背負った人がとても多い。辛い思い、苦しい思いをした人ほど、誰かを笑わせたいと願うのかもしれない。

苦しい時ほど、人は、笑いたいものなあ。

2011/10/13