好日絵巻 季節のめぐり、茶室のいろどり

好日絵巻 季節のめぐり、茶室のいろどり

31 森下典子 PARCO出版

「青嵐の庭にすわる」「好日日記」の森下典子である。これらの本の挿絵も含め、お茶のお道具、茶花、お菓子を描いて集め、絵巻物のような本にしたのがこの本である。

作者はプロの画家ではないので、素人ではあるのだが、暖かみのある絵である。描いた人が、何が良いと思って描いたのかが伝わってくるような。

真っ白なお饅頭を割ると、中から濃い緑の餡があらわれる常盤饅頭。雪をかぶった松の緑の色が鮮やかだ。広口の水差しは二つに割れた塗り蓋が蝶番でつながれており、開けると裏側に葦の蒔絵があらわれる。安南写蜻蛉のお茶碗は小ぶりで愛嬌がある。お茶に関わるものやお菓子はなんときれいで楽しく季節感が豊かなのだろう。

絵巻のような薄い本であるのであっという間に読める。というか眺め尽くせる。これを味わうと、ますますお茶を習ってみたくなる。でも、甘いお菓子は私の身体には禁忌なのだ。あーあ。

それにしてもお茶という世界がこれほどに季節と密接にかかわっているとは知らなかった。無知だったなあ。季節の移り変わりは、人間の世界の様々な起伏に関わらず淡々と過ぎる。そのことに、時に癒され、時に励まされ、時に教えられる。季節のめぐりとは、なんとありがたいものなのだろう。