83おいしい中国「酸甜苦辣」の大陸 楊逸(ヤンイー) 文藝春秋
芥川賞作家だということは知っているけれど、この人の小説を読んだことは一度もない。たまたま、図書館の「今日帰ってきた本コーナー」にあって、食べ物の話や旅の話が読みたくて、借りてきた。
そうしたら、なんだかしみじみ静かに面白い本だったのだ。
作者は中国ハルピンの出身である。両親は地主階級出身の知識層だったので、文化大革命の時、下放されて、田舎へ追いやられる。子供時代の美味しいものの楽しみは、ここで打ち破られ、とにかく、なんとか毎日上をしのいでいかねばならないような生活が始まる。と言っても子供だった彼女の想い出に、それほど悲惨なものは感じられない。いや、書こうとしていないだけなのかもしれないが、両親の心遣いと愛情が、ともかくも、子どもたちに何かを食べさせていこうとしてくれたのだということが伝わってくる。そして、彼女は、何でも好き嫌いなく食べられる人間になるのだ。
中国の文革時代の本は何冊か読んだことがある。苦しい思いや恐ろしい出来事が、どれも淡々と語られていて、返ってそれが胸に迫る・・というものが多いのは何故だろう。
文体が静かだ。そして、客観的に見据える目の確かさを感じる。日本語を母国語としない人が、これほどまでに表現できるのだという事実に私は驚いてしまう。
楊逸さんの他の本も読んでみたい、と思った。
2011/7/30
