そのうちなんとかなるだろう

そのうちなんとかなるだろう

2021年7月24日

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「そのうちなんとかなるだろう」内田樹 マガジンハウス

これは、本当にいい本だった。内田先生が退官される2011年、たまたま神戸女学院大学の近くに住んでいたので最終講義を聞きに行けたのだけれど、僥倖であった。この本に書かれているようなことも、そのときに話していらしたのを思い出す。

この本は、いわば内田樹の自伝である。この人は、結局、子供の時から、やりたいことをやってきた人である。やりたいことは、人にどう言われようと、どう思われようとやったし、やりたくないことはやらなかった。それを貫いたことが、この人の人格を作り上げている。評価されたり、名声を得たり、人に褒められることよりは、自分がやりたいこと。やろうと決めたこと。それを大事にする、という姿勢に私は強く共感する。

決して順風満帆の人生だったわけではない。高校を中退し、家を出て挫折し、頭を下げて家に戻って受験勉強をし、浪人もし、大学院の試験にも三回落ち、大学教員の公募にも3十回以上落ちた。離婚して子どもを育てながらの神戸女学院の教授時代は、功績を残すよりは子育てを優先した。そういう姿勢だったからこそ、本当に自分の望むことだけをしてこれたのだと思う。

彼が高校を中退して挫折し、家に戻った時の話である。

 僕はその父親の雅量には後になってずいぶん感謝しました。
 いろいろ言いたいことはあっただろうけれど、そういうときにかさにかかって子どもに恥をかかせるようなことはしなかった。僕はそのときに家出に失敗したことからよりも、人生最初の「大勝負」に失敗したぼんくらな息子を両親が黙って受け入れてくれたことから、人生についてより多くを学んだように思います。
 たとえ家族であっても、それほど親しい間であっても、相手にどれほど非があっても、それでも「屈辱を与える」ことはしてはいけない。これは父母から学んだ最もたいせつは教訓だったと思います。
          (引用は「そのうちなんとかなるだろう」内田樹 より)

私はこの一節に結構、感動してしまって、何度か読み返した。人に、屈辱を与えてはいけない。それは、人と人とが関わる上で、とてもとても大事なことだと思う。

この本から、多くのことを得たけれど、それをここに書くよりは、みんな、読んだほうが良いと思う。これは、読んだほうがいい本だよ。

2019/9/29