世界史の新常識

世界史の新常識

2022年3月18日

36 文芸春秋編

上の息子が赤ん坊のころからのママ友が教えてくれた本。世界史と言えば、全くの世界史音痴だった私が、娘が高校生の時に教科書を借りて勉強しなおした話はこちら。この経験は非常に役に立った。歴史を知ることは視野を広げ、物事の理解を深め、人生を豊かにすると思い知った。なんでこの歳までやってこなかったのかとつくづく思った。というわけで、以降、様々な世界史本も怖がらずに読めるようになったのだが、この本は、教科書とはまた違った視点で歴史を教えてくれて、非常に興味深かった。

この本は、季刊「文芸春秋SPECIAL」に掲載された世界史に関わるコラムを古代から現代にいたるまで、また歴史を知るためのブックガイドなども含めて収録したもの。 呉智英、井上文則、樺山紘一、出口治明、野田宣雄 などなど多数の歴史学者が書いている。

アメリカの二大政党、共和党と民主党の歴史は意外なものだったし、南北戦争の目的として黒人奴隷解放が掲げられたのは、イギリスが南軍に加担するのを防ぐのを防ぐためだったというのも盲点であった。一番印象深かったのは、本を勧めてくれた友人も指摘していた野田宣雄の「世界史から何を学ぶか」という一文である。今や世界政治は先進的な国民国家によってではなく、米・中・露・EUの四帝国によって動かされる時代となっている、と彼はいう。その中で、帝国たり得ない日本の進む道は極めて険しい、という彼の指摘は、悲観的ではあるけれど、当たっているように思えてならない。

もう一つ、印象的だったのは、出口治明の「史上『もっとも幸せな国』はどこだ?」である。この場合の最高の国の定義は、彼によると簡単で、人間の素朴で基本的な欲求が満たされている状態、すなわちお腹いっぱいご飯が食べられて、夜は寝床でぐっすり眠れて、カップルが安心して子を産み育てられること。それに移動と職業選択と言論の自由が加わればよろしい、と。よく江戸時代が平和で独自の文化が花開いた時代として評価されてはいるけれど、当時の日本人の体格を調べると、歴史上でもかなり貧弱な体格だったとされ、それはお腹いっぱい食べられなかったからだと推察されるという。また、職業選択も移動も自由ではなかったので、却下。彼が言うには、もっとも幸せな国は、古代ローマ帝国の五賢帝の時代だという。・・という話を夫にしたら、「でも、それは奴隷制が支えていたんじゃないか?」ですと。確かに、その時代にもし私が生まれていたら、奴隷だった可能性が高いなあ、と思えて、却下したい気持ちにもなった。

どちらかというと、この話から私が感じたのは、とりあえず今自分はとても幸せな状態にある、ということと、でも、世界にはその幸せが脅かされている人たちがいる、ということである。歴史は繰り返し、人は何度でも間違いを犯す。同じような間違いを繰り返しながら、少しは賢くなっているのか、世界は良くなっているのかと思っていたけれど、やっぱりもっと大きな間違いも平気でするようになっていて、人間はいつまでも進歩しないなあ、とそんなことを歴史を学ぶと考えてしまうのは、なんだかなあ、なのである。

どうか平和が来ますように。戦争が終わりますように。それを、私たちは願い続け、訴え続けるしかないと思う。人間は、みんなもっと歴史に学ぶべきだ。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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