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「架空の料理 空想の食卓」
作家 リリー・フランキー 料理人 澤口智之 扶桑社
「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」出版以降、虚脱感や喪失感に襲われて、原稿を全く書けないでいるリリー・フランキーが、唯一引き受けていた「料理天国」の連載。あり得ないような状況をリリーが設定し、それに則って、澤口が料理をし、二人が書く。材料に糸目をつけない料理の、大きく鮮やかな写真。ウマそう、と思うものも、そうでないものもある。それにしても、なんという力のある料理なのだろう。
おとぎの国の夜食は、かぼちゃのニョッキ・スパゲッティ・プッタネスカ娼婦風。七夕の日に食べたい料理は、カタツムリのタヤリン。本能で感じる料理は、ストランゴラ・プレーティ(パンのニョッキ)・アオリイカの温製サラダ。青年が大志を抱くための料理は、サッフォーク種仔羊の丸焼き。
どれも、荒々しいほどに力強く、さあ、食え、食えるもんなら全部ガッツリ食ってみろ!と迫ってくるような料理である。
この連載を続けて三年半、リリー・フランキーは静かに回復していき、最後の原稿を書いたときには泣いたという。澤口は、最後のフライを揚げながら、笑っていたという。
人は食べた料理でできているものなあ。食べ物って、すごい。
2011/9/2
