「樋口一葉★にごりえ他」伊藤比呂美 河出書房新社 24
「にごりえ」「この子」「裏紫」を、伊藤比呂美が現代語訳したもの。
樋口一葉は、子どもの頃に、子ども向けの抄訳で「たけくらべ」を読んだ。「たけくらべ」の他にもいくつか作品が入っている本だったのだと思うけれど、全然覚えていない。というか、何が何だか分からなかったという覚えが。「にごりえ」も読んだのかもしれないけれど、こりゃ、わからなかっただろうよ、と思う。だって、色街の女の話だもの。
それにしても、今読んでみると、面白い。というか、樋口一葉、やるじゃーん、って思う。一葉さんって、誇り高き没落武士の娘だよね。その人が、あの時代に、こんな物語を書いていたなんて、すげー。かっこいいっす。
「この子」は、気の沿わない夫に嫁いだ妻が、子どもを産んで、夫との関係に目覚める話、「裏紫」は裕福な商家の嫁が不倫する話。どれも、一葉さんの実体験じゃないのに、生々しく、その人の気持ちに寄り添って書かれている。物を考えずに流される女たちではない、心を持ち、考え、自分の意思を持った女たち。色街であろうと、主婦であろうと、不倫に走ろうと。
あの時代に、こんな物語があったなんて。と、今頃、私は感嘆している。歳若い、武家の娘が、こんな物語を書けたのね。運命に翻弄されて、なよなよと生きる女だけじゃなかったのよね、その頃でも、生きて、働いて、考えて、生活してたのよね、みんな。
2011/5/7