122
「あっちの豚こっちの豚」佐野洋子 小学館
佐野洋子が亡くなったあと、北軽井沢の山荘から、「あっちの豚こっちの豚」という封筒が発見された。佐野の息子、広瀬玄が高校生の時、絵本の絵を描かないかという話が持ち上がった。佐野洋子と広瀬玄、二人で同時に絵を書いて編集者に選んでもらうことになったそうだ。結果、広瀬の絵が初めて世にでることになった。
え?
佐野洋子先生。本気で素人と競っていらしたんですか。
それとも途中から本気になっちゃったんですか。
あんた、どれだけ負けず嫌いなんですか。
と、広瀬がいうほど、発見されたその絵は完成されていた。そして、広瀬はこの絵でもう一度、絵本を出すことにしたのだ。悔しいから、自分も新たに絵を書いて巻末に載せることにして。
佐野洋子は率直の人だ。この方がよろしい、正しい、カッコ良い、ということは書かない。だって私はそうだもの。ということを、書く。
この本は、まさに佐野洋子そのものだ。林の豚小屋に住んでいた豚は、いつの間にか洋服を着て、家族を持って、街に勤めに出かけるようになっていた。でも、逃げ出して、林に戻っちゃったのだ。ある日、ピクニックに来た豚の家族をみかけたら、そこには服を着た自分がいた。
「こっちのおれが元気なら、あっちのおれもしんぱいないからな。」
と、豚は一人で林で笑うのだ。
服を着た豚じゃない。自分は、どろんこで林にいる豚なんだ、と豚は思う。街にいる豚もしあわせだからいい、と思いながら。
ああ、佐野洋子だ、と思った。自分は自分、どうしようもなく、こうなんだもの。
(引用はすべて「あっちの豚こっちの豚」佐野洋子 より)
2014/10/30
