48
「ニューギニア水平垂直航海記」 峠恵子 小学館文庫
作者はシンガーソングライターなんだそうだ。大学生の時、ライブハウスで歌っていてスカウトされ、大手芸能プロダクションに所属して憧れのシンガーになり、家族も友人も恋人も、何をとっても満たされ、いつも幸せだった彼女が、「苦労を知らない」ことに疑問を抱いて「日本ニューギニア探検隊」に応募したという、なんのこっちゃ、な展開である。
探検の計画は、ヨットで太平洋を渡り、ニューギニア島を目指し、ゴムボートでニューギニアの大河マンベラモを遡上、オセアニア最高峰カールステンツピラミッド(5030m)北壁の新ルートを世界初のロッククライミング登頂するというもの。隊員は、山岳界の大物にしてサーファーでもある藤原一孝隊長を先頭に、元自衛隊員、早大探検部のユースケ(これが後の角幡唯介である)、そして著者である。
実際には、ヨットで太平洋を渡っている間に船酔いがひどくて一人抜け、ニューギニアで登山のめどが立たずに、いつの間にか「幻の野犬」探しに目的が変わって情熱が続かない者が出、という具合に、思うとおりにコトは進行しないってか、そんな行き当たりばったりでいいのかよ的展開なのだが、まあ、よくぞ頑張って行ってきたなあ、とは思うのである。
「空白の五マイル」を読んだ時、こいつはなんてかっこいい男なんだろう、と感動したユースケくんも、この本では股ずれに悩む、やたらと臭い(オーラの話じゃないです、物理的に、臭いんですね)情けない男だったりするから笑える。隊員たちも、目的に向かって一致団結、じゃなくて、けっこうひどいことを書かれていたりして、仲間割れも半端無いのだが、まあ、現実ってこういうもんよね、と読んでいて思う。
とはいえ、そんな率直な語り口が、この本の魅力である。なんだかんだいって、よく頑張りました。それが何の得があるのかは、長い人生の中でじっくりわかっていくことなんでしょうけれど。若いってそういうことよねー、などと最近とみに体力の衰えを感じる私はしみじみ思うのでありました。
2012/6/20
