「子どもたちのアフリカ 〈忘れられた大陸〉に希望の架け橋を」 石弘之 岩波書店
パルティオのお友達から紹介された本です。
痛くて辛くて、途中でお休みを入れないと読み切れない本でした。
五章に分かれています。
エイズと孤児、性的虐待、女性性器切除、子ども労働、少年兵士、子ども奴隷。
どれも、ほんとうに深刻で胸の痛む現状が、具体的な数字を元に書かれています。日本という国が、どんなに恵まれているのか、私たちがどんなに、何も知らない、何もしていないかを痛感します。
成人(5~49歳)人口に占めるエイズ陽性率(2003年末)
スワジランド 38.8%
ボツワナ 37.7%
レソト 28.9%
妊婦(15~24歳)のエイズ陽性率
スワジランド 39.0%
ボツワナ 32.9%
レソト 28.8%
(数字は「子どもたちのアフリカより引用)
エイズは、清らかな処女と交わることで治る、という迷信が、子どもたちのエイズ感染率を上げているという恐ろしい事実があります。それは、次の章につながります。すなわち、レイプや、性的虐待がアフリカ全土で日常化しているという事実に。
2002年ケニアで実施した調査によれば、女性の四人にひとりがレイプで処女を失った。ボツワナでは、2002年の調査では、12の中学校の生徒の17%が教師に性的行為を強要され、50%がわいせつ行為を受け、34%が金品や成績の見返りに性的行為を要求された。
南アフリカでは、2001年の調査によると、女子中学生の39%が教師との性的関係を経験している。
「アフリカで女として生まれる不幸」という言葉がこの本には書かれています。数字に基づくこの事実に、私は絶句するしかありませんでした。
不幸から脱するために、希望を持つために、親は子どもに教育を受けさせようとします。ですが、そう願って行かせた学校で、娘が性的虐待を受け、病気を移されたり、妊娠させられたりしてしまう。それでは、もうどこにも行くことができないではありませんか。
そして、女性性器切除の問題。この章は、あまりの痛さ怖さに、直視するのが恐ろしく、片目をつぶって読んでしまったようなところがあります。
ところで、この本からは離れますが、女性性器切除については、オール読物2010年3月号「声なきメッセージ ~アフリカ紀行~」 で、角田光代さんが優れたレポートを書いていらっしゃいます。角田さんらしく、深刻すぎず、声高にならず、恨みも込めず、淡々と、それでも人間らしい感情も当たり前に存在する中で、丁寧に書いてあって、怖がらずに読めました。
それができたのは、たぶん、イデオロギーが先行していないことや、先入観がないこと、見たままをそのまま受け入れる柔軟性があったからじゃないかしら、と思います。
文化を尊重すること、土足で踏み込むこと、そんな頭でっかちなことより、死なない可能性がそこにあるのなら、それを掴むだけ、というシンプルな力強さを、角田さんは、ここで感じています。切除を廃止している村には、不思議と風通しのよさがあり、廃止していない村の子供には表情がない。それは、あまりにわかり易すぎて、偏見ではないかと思っていたけれど、やっぱりそうなのだ、と彼女はいいます。
そういうレポートを読むと、アフリカに、ある希望を持つことができて、嬉しく思うのですが。
ですが、この本では、まだ、辛く悲しい現実がさらに報告されています。
「子どもたちのアフリカ」に戻りましょう。
少年兵士と、子ども奴隷の問題。
僅かな食料と劣悪な環境の中で、朝から晩まで、コーヒー農園やカカオ農園で働き続ける少年たちがいます。その多くは、疲れ果て、病に倒れていきます。彼らのタダ同然の労働が、コーヒーとチョコレートの安値を支えています。
また、麻薬漬けにされ、地雷がどこに埋められているかわからない平原を、手を繋ぎ、一列になって、歌いながら歩かされる少年たちがいます。彼らが地雷を踏み、爆破されたその後を、軍隊が進むのです。彼ら少年たちは、いったい何のために、生まれてきたのでしょうか。単なる道具として扱われる子供たちの心と体を思うと、どうしたらいいかわかりません。苦しいし、悲しいし、痛いし、そして、激しい無力感に襲われます。
アフリカを救うには、経済的物質的援助より、なにより先に、教育が大事だと感じます。あらゆる虐待の危険がない公正な教育が。
人は、困難の中で荒んでいくのでしょうか。いや、荒んでいるなどと、めぐまれた環境でのうのうと生きている私に断罪できるのだろうか、と情けなく考えます。
私は、みんなのために自己犠牲を・・などと考える善人ではないけれど、でも、こうやって苦しんでいる人々もいれば、豪華に暮らし、強力な軍事力を備えもするアフリカの国々で、力を持つ人々が、もっと皆のために公平で広い視野を持ち、また、多くの人々が現状の何が矛盾しているのか自覚的になっていかねば何も変わらない、と思うのです。
安いコーヒーやチョコレートを喜んで楽しんでいる私たちも、この矛盾の一端を担っています。というより、この豊かな生活それ自体が、彼らの不幸とつながっているのでしょう。
辛すぎて、読み通すのが嫌だとさえ思ってしまいました。
でも、だからこそ、多くの人が読むべき本なのかもしれません。
2010/10/20
