満願

満願

2021年7月24日

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「満願」米沢穂信 新潮社

 

「満願」が、週刊文春「ミステリーベスト10」と、早川書房「ミステリが読みたい!」と宝島社「このミステリーがすごい!」のミステリーランキングで1位の三冠を獲得したというニュースを見た。ふーん、と思って書棚を見たら、あらら、あるじゃないの、「満願」。夫が借りてたんだわ。三冠を取る前に借りてたなんて、夫、お目が高い。これは今から図書館に頼むと順番が回ってくるのは五年後かもしれないわねー、と思うと急に読みたくなる。絶対に次の人が待ってるから早くしなくちゃ、と読書計画を繰り上げて、先に読むことにした。
 
うーむ。しくったなあ。私の嫌いな、人がじゃんじゃん死ぬミステリではないか。なんで気が付かなかったんだろう。そういえば、夫に「どうだった?」と聞いたら一言「米沢さんは、人が悪いね」と。何じゃそりゃ、と思ってたんだけど、なるほど、人が悪いわ。
 
湊かなえの「告白」の読後感にちょっと似てるかも。あれほどひどくはないけど。なんでこんなに人気なんだろうと思ったのは同じ。たしかにうまい、読ませる、よく出来ている。でも、私は嫌いだ。この本の中に出てくる登場人物も、ここに描かれる人間のあり方も、好きじゃない。もちろん、作者も好きだと思って書いているわけじゃないと思うし、むしろ逆、こんな人間って・・・と少し斜に構えているからこそ書けたんだろうけれど。
 
でも、これを面白がる心のタフさが私にはない。最初の警官の話なんて、読み終えて喉元になにか詰まったみたいな気持ちになって、しばらく飲み込めなかった。いるんだよな、いるよ、私の中にもあるよ、こういうのって。それはわかるけど、でも。
 
先日ちょっとニュースになったNHKの職員のことを思い出してしまった。かばんを奪われたと虚偽の通報をしたという事件。自分のしたことに直面し、責任を取る勇気がないと、人は時としてとんでもないことをしでかす。これ、笑い事じゃないし、他人ごとでもないんだよね、とつくづく思う。思うけど、楽しめないのは、きっと自分の中にありすぎるからなんだろうね、同じものが。あーあ、早く返そうっと。

2014/12/12