結婚失格

結婚失格

2021年7月24日

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「結婚失格」枡野浩一 講談社

 

夫が、「結婚失格」を読んだらなんだか暗くなっちゃってさあ、と食事中につぶやいた。何じゃそれ、と思って、読んだ。
 
二歳の子どもをつれたバツイチの女性と結婚して、二人の間にももう一人子どもができて、幸せに暮らしていたはずなのに、仕事部屋を別に借りてくれと言われて、よそで仕事をしていたら、今度は週末しか帰ってくるなと言われて、そして、ある日、もう二度と来るなと言われた。
 
妻はともかく、子どもに会いたい。
彼の頭はそのことでいっぱいになってしまって、それ以降、彼の書くもの、表現は、子供のこと、離婚のことだけになる。この本も、登場人物の職業などを微妙に変えているだけで、ほぼ実話である。なんと、書評すら、離婚と会えない子供がらみで書かれているのだ。
 
暴力を振るったことなど一度もないのに、ドメスティックバイオレンスがあったとして、子どもに逢うのを禁じられ、妻に直接メールやファックスを送ることさえ許されなくなる。住居と仕事場の家賃をすべて負担していたのに、経済的にヒモであったとされ、育児にしっかり取り組んでいたのに、何もしなかったとされる。哀しみと怒りが行間から溢れてくる。
 
とはいえ。
臆面もなくここまで晒されたら、たまったもんじゃないぜ、という気持ちも湧いてくる。夫婦のことは、夫婦にしかわからない。どうやら彼が暴力など一切振るわなかったことは本当らしいし、それはとても気の毒なことだと思うけれど、そんなふうに関係性か壊れてしまったのは、どちらか一方だけにすべての責任があるといえるのだろうか?少なくとも、そんな女性を妻にして、日々を過ごし、要求に従って行った彼自身の選択も、どこかで間違っていたのではないか。
 
結婚って難しい。離婚はもっと難しい。他人だった男女が互いに理解し合い支えあい許しあい、新たに人間を産み育てていくのってほんとうに難しい。だからこそ、それをやっていくといろんなことが得られるのだし、楽しいことも嬉しい事もたくさんあるのだけれどね。
 
彼の別れた妻のことは、どこかで読んだ気がして、とある有名なおたく評論家の元妻だと思ったら、それは間違いだった。どこで間違ったんだろう。とにかく、この女性、結婚相手に文筆上で嘆かれるのは初めてじゃないような気がする。どこで読んだのかなあ・・・。

2013/10/25