133
「紙の月」 角田光代 角川春樹事務所
「かなたの子」があんまり怖すぎたんで、ちょっと警戒しながら読みました。あれとは別の意味で、やっぱり怖いお話。
真っ直ぐな正義感を持った凛とした女子高校生だった主人公が、どうやって銀行で不正を働き、転落していったかが描かれています。リアリティがあるので、読んでいて怖くなります。
同時並行にいろいろな女性が描かれていて、それぞれの気持ちがあまりにリアルなんだもの。行き場のない不満や、満たされない思いが蓄積されて、どこにどうやって出ていくのか、が息遣いまで聞こえてくるみたいに描かれています。
買い物や浪費に発散するという癖は私にはないけれど、逆に、節約に走って子どもに悲しい思いをさせる母親のエピソードには、ちょっとぎくっとしてしまいます。お金を大事だと思えない子になってほしくない、お金が湧いて出てくるみたいにしか思えない人間に育ってほしくない、という思いはけっこう強いからなー、私。
買い物に依存する女性なら、何人も知っています。ギャンブルにつぎ込んで、一攫千金を信じて疑わない馬鹿な男も、何人も見ました。軽蔑して切り捨てるのは容易いけれど、そういう人たちの心の奥底にあるものは、切なくて苦しくて寂しくて悲しくて、そして、もしかしたら美しいのかも、なんてふと思ってしまいそうです。
そう、そこ!!
人の情けなさをすくい上げて、切なく悲しく見せてくれる物語。でも、美しいのか、それは??とおもいます。美しくはないでしょう、情けないでしょう。
西村賢太を読んだ時にも思ったけれど。ダメダメな人間を見るのは面白い。だって、それは自分の中にもいるからね、厳然として。だからこそ、時として、胸さえ打たれます。
でも、遠くで眺めているからなのだ、と同時に思います。うかうかと共感すまいぞ、ダメダメな私自身を、なんとか心のなかで飼い殺していくぞ、と後退りしながら思う私が、いつも一緒に本を読んでいます。
2012/10/28