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「徘徊タクシー」坂口恭平 新潮社
坂口恭平は、本気なんだか冗談なんだかわからないような夢みたいなことをホントにしちゃおうとする人である。何しろ彼は独立国家の大統領なんだからね。
そんな彼の小説は、老人の徘徊の手助けをする徘徊タクシーの会社を立ち上げようとする物語だった。と言っても、物事はそんなにうまくいかないのだが。だけど、一人の老人の徘徊を手助けしながら、彼女が本当に行きたがっていたところに行き着くことに、彼は成功する。
徘徊って、本当に行きたいところが見つからなくて、探しまわっているだけなのかもしれない。私は、いつの日か、どこを目指すのだろう。小さいころ、引っ越しが辛くて、夜、夢を見た。ながい長いトンネルを通り抜けると、前住んでいた街にたどり着く。そんな夢だったことを思い出した。
2015/2/24