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「ルポ東京電力 原発危機1ヶ月」奥山俊宏 朝日新書
この本は2011年3月11日以降一ヶ月余の東京電力本店での取材の記録だ。朝日新聞の社会グループ記者である著者は、50日間毎日、東電本社に通って取材し、それをインターネット新聞にレポートしてきた。そのオンタイムの、取材と同時進行で書かれた記事が現在形の文体で綴られている。もちろん、今となっては過去のこと、後から事情が変化したり、誤りだったことが分かったり、新しい事実が判明したこともあり、補足訂正が加えられている。しかし、現在進行形のドキュメンタリであることは間違いなく、過去となったいま、それを読むことは、またさらに新たなる恐ろしさ、驚き、苛立たしさを呼ぶ結果となっている。
それにしても、人間の記憶力なんていい加減なものだ。いや、人間の、なんて一般化しちゃいけなくて、ただ単に、私がいい加減なだけなのかもしれないが、あんなに怖いと思い、知りたいと思い、ニュースを追っていたはずなのに、忘れていること、ああそうだったんだっけ、と思うことがたくさんある。経験に学ばない愚かしさは、こういう所から来ているのだろうか。反省せねばなるまい。
それにしても。こうやって時系列で記者会見の模様を追っていくことで、東電の会見のいろいろな矛盾が明らかになっていく。事実を隠したり、はぐらかしたり、ごまかしたり、転化したり、開き直ったり。東電のトップの体質には、疑問と怒りを感じずにはいられない。
この本もまた、一人でも多くの人に読んで欲しいと思う。
2011/7/8